TBM工法(Tunnel Boring Machine)は岩盤の中を掘り進む工法です。シ-ルド工法が土の中を掘り進むとすればTBMは強固な岩盤に穴を貫いてトンネルにするわけです。 外見はシールドと似ていますが、シールドが自ら組立てたトンネル(セグメント)にジャッキを当てて進むのに対してTBMはセグメントを組立てることなく直にトンネルの壁面にジャッキを当てて前進します。土にジャッキを当てても崩れてしまいますが、強固な岩盤だからジャッキを当てられるわけです。掘り進んだ後もそのままです。NATMのようにモルタルを吹き付ける必要もありません。強固な岩盤層を堀進むわけですからトンネルが崩れる心配はないのです。
このTBMは欧米で開発された工法です。日本では青函トンネルの工事にも初期に用いられています。ところが青函でのTBMは散々な目に会いました。水は出るは岩盤は崩れるはで結局中途で採用中止になりました。均一な岩盤質の欧米に比べて細長い島国で地質も地域により千差万別の日本列島ではTBMは通用しなかったのです。しかしこういった教訓から逆にあらゆる複雑な地盤に対応できるTBMが国内で次々と開発されるようになりました。
例えばシ-ルドとのあいのこのような土でも岩でも掘り進めるTBMです。こういった技術改良の歴史を経て日本は逆にTBMで世界最高峰の技術を極めるに至ったのです。
さて、私が初めてTBMを撮影したのは平成元年、長野県の山奥でした。工事は導水路工事。つまりダムの貯水量を安定させるために山向こうの川から水をバイパスして補給するトンネルの工事です。
この時、機械メ-カの担当者からとんでもない注文がありました。TBMのカッタ-が岩盤を掘り進む様子を撮影して欲しいというのです。物理的に無理な注文です。どうやって岩と機械の間に入って撮影できましょうか。考えたあげく機械発進直後にカッタ-が岩盤の中に食い込む瞬間をとらえる方法をとりました。
撮影班は腹ばいで機械の天井によじのぼり竿の先に小型カメラを取り付け必死の思いで岩盤を掘り進む様子をしっかりととらえたのでした。世界初のTBM岩盤掘削の様子はこうして克明に映像化されました。
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