昭和の終わりから平成の初めにかけて日本各地で下水道工事の記録撮影をしました。この時期は下水道を完備するための本管工事が全国的におこなわれていました。下水道本管は主に直径2メ-トル前後のシ-ルド機械を用いて工事されることが多かったようです。一般的な土質だけでなく比較的柔らかい岩盤や岩石混じりの地盤にも対応できるシ-ルド機械、あるいは市街地の入り組んだ※道路の下を掘り進む急カーブの切れるシ-ルド機械など新技術が次々と開発された時期でした。※トンネルは人の敷地内を勝手に通過出来ないので道路下を掘り進むことになる。
地方各地をドサ回りして撮影するとしんどいなりに楽しいこともあります。その一つが東京では食べられない美味いものに出会うことです。冬、宮城県石巻漁港近くで下水道本管工事の撮影をしていました。寒いのにはまいりましたが、情景カットで漁港の水揚げシ-ンを撮影したあと組合の食堂で食べた鰯蕎麦なるものの美味さはいまだに忘れられません。
石巻漁港近く、日和山のふもとの道路下に沿って工事は進められていました。本管工事といってもこのような地方都市になると管の直径が1mもあれば足りる場所が多いのです。直径が1メ-トルでは機械の中に人が入ってトンネルを組立てることも出来ません。そこでこういう小口径の工事では推進工法が多く使用されました。シ-ルドやTBMが自らの力で前進する自走式なのに対して推進工法では立坑の元押しジャッキで土管(ヒュ-ム管)ごと掘削機械を押し進めてゆく方法がとられます。掘り進むに従って土管を継ぎ足しながらジャッキで押して掘削機械を前進させるわけです。ここで使用されたのはTBMを小型化したような岩盤対応の掘削機械でしたがヒュ-ム管の内側が直径1.2mで、その中に潜り込んで機械先端の様子を撮影するのは誠に二度とやりたくないほど大変なものでした。
推進工法ではこれより小さな直径60cm前後のアイアンモ-ル(鉄のモグラ)という推進工法もあります。その土管の中に腹ばいになって坑内先端までメンテナンスに行くメ-カ-のサ-ビスマンもいると聞きました。まさにこのような人々の涙ぐましい努力によって日本の下水道は完備されたのではないでしょうか。
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