トンネルのお話 その6 予測と手当

地面の中を掘り進むということは、いわば目隠しして知らない場所を歩くようなものです。街中であれば他人にぶつかりよろけます。運悪くその筋の人に当たれば殴られます。また溝に落ちてケガをすることもあります。

こういった事が無いように目の不自由な方であれば盲導犬を付けますね。

つまり水先案内人です。 トンネル工事も同じことでまず先に何があるかを予測する必要があります。

これを前方探査といいます。次に溝に落ちてケガをした場合の手当てが必要です。これを支保(しほ)と言います。 前方探査には音の反射の波形を調べてこれから掘り進む土質を予測する方法があります。潜水艦の音波探査(ソナ-)のようなものです。最近では医療でなじみのあるCTなども使われるようになったようです。しかし一番確実なのは実際に掘ってみることです。ボ-リングをして前方の地山(じやま)からサンプリングをおこないます。しかしサンプルはチクワ程度の小さなものですからある程度の予測しか出来ません。もうすこしはっきりと知るには小型のトンネルを掘ってみることです。

このトンネルを先進導孔と言います。先進導孔を掘ればこれから先の地質が手に取るようにわかります。地質がわかればどの様な手当て(支保)をしたら良いのかがわかり事前に必要な資材を準備することも出来るわけです。

支保には様々な方法があります。

NATM工法でご紹介したモルタルを吹き付ける方法。ある程度安定した地山であれば掘った表面(抗壁)さえ崩れなければトンネルは自立できるようです。

更にロックボルトを四方八方に打ち込み、鋼リングというア-チ型の鋼材でトンネルを支えます。

あるいは金網を張って天端(てんば:トンネルの天井)の崩落を防ぐ方法など様々な支保工のパタ-ンがあります。

有名なトンネル映画に「黒部の太陽」があります。これは黒部ダムを作るための資材を運ぶ(作業抗)掘削の苦労話が中心になっています。当時は前方探査技術が不十分な為もあったのでしょう。地熱によるダイナマイトの暴発や出水など悪戦苦闘の様が描かれています。

「海峡」は青函トンネル掘削のお話です。ここでは無尽蔵の大海が相手ですから、掘れば海水が際限なく出てきます。支保を施しても間に合いません。そこで掘る前に前方の地山に液状のガラス成分を注入して固めてしまう方法(持田式注入法)が紹介されています。

tunnel_7

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP